昭和天皇御製板
平成19年 10月 1日
十月の御製板を奉掲致しました。
頼成もみどりの岡になれかしと
杉うゑにけり人びととともに
四月の「県庁屋上よりの国見の御製」の所で略述しましたやうに富山県は植樹祭の原点の光栄を担ふ県なのですが、本県に於て第二十回国土緑化大会(この第二十回迄が「国土緑化大会」で、第二十一回から現行の「全国植樹祭」が正式名称となつた。なほ本県の此の大会は「四十四年植樹行事ならびに国土緑化大会」と称された。)が開催されたのは昭和四十四年五月二十六日のことでした。両陛下の本県への御成りは三十三年の国民体育大会以来実に十一年ぶりであり、二十四日東京を御発輦、二十五日は県内各所を御視察、二十六日愈々砺波市頼成山を会場に植樹祭が挙行されました。
当日は風やや強く晴時々曇、時に小雨。植樹には都合の良い日となり、一万二千六百名の参加者は午前十時より緑化功労者の表彰等の国土緑化大会を開催、午前十一時お召車会場入口に到着、花火が高らかに両陛下の着御を告げ、植樹行事が始まりました。先づ全参加者による国歌斉唱、次に天皇様より「今後も関係者一同が益々協力して、国土緑化を推進し、国運の進展に寄与するよう、切に希望します」との御言葉を賜り、愈々お手植ゑ。両陛下は立山杉、ぼか杉、増山杉を夫々一本、「森」の形になるやうにしてお植ゑ遊ばされました。そして次に一万二千六百名の参加者の手により一万五千本の苗木が六ヘクタールの会場に植ゑられ、両陛下はこれを頼母しげに御覧になられたのです。
「全国植樹祭」には毎回その大会のテーマが掲げられてをり、この第二十回大会のテーマは「低質広葉樹の高度利用と拡大造林の推進」でした。過去十九回の大会では殆どが松の類で、桧が四回、杉は三回で、今回の富山県で杉は四回目となりました。近年平成の御代になつてからは橅、桜、山法師等の樹種もみられます。又、昭和二十五年第一回の山梨県大会のテーマは「荒廃地造林」で、以下第二十回の富山県大会迄はそのテーマの殆どに「造林」の二文字が見られます。正に、大御心を戴いて、戦後復興に邁進せんとする先人の息吹が伝はつて来るやうです。このやうな先人の努力のお蔭を蒙り、素晴らしい「緑」を蘇らせた現在では、その大会テーマも昨平成十八年岐阜大会では「ありがとう 未来へつなげ 森のめぐみ」でした。今年平成十九年北海道大会のテーマは「明日へ 未来へ 北の大地の森づくり」です。先人の努力を承け継いで、豊かな「緑」を未来に伝へる事の大切さを語り掛けてゐるのです。
「富山県植樹祭」の御題の付けられた此の御製の碑は頼成山に建立されてゐますが、「人びととともに―天皇も、国民も皆一緒に」と仰せ給ふ点に殊に留意しなければなりません。この大御心を大切にして、今後も郷土の、更には国土の緑化にお互ひに努めたいものです。
なほ、当神社におきまして毎年○月に「どんぐり祭」を行ひ、神奈備(かんなび)の杜(もり)(神様の鎮座し給ふ神域の杜)をより充実させるやう努めてゐますのも、この大御心を戴き奉つてのことなのです。